第十四回 夢吉のバカ!

夢吉のバカ!13→14 @お江戸上野広小路亭

三笑亭夢吉:ご挨拶
昔昔亭喜太郎:「ままごと」(新作)
三笑亭夢吉:「スリル」(新作 桂米丸作)
三笑亭夢吉:「干物箱」
-仲入り-
三笑亭夢吉:「茶の湯」(ネタ下ろし)
三笑亭夢吉:ご報告(ご連絡)


待望の「夢吉のバカ」。恒例の開会挨拶。今夜はさらりとしてた。

初めて聴くA太郎さんの弟弟子、喜太郎さん。顔と佇まいが、そこはかなくと俳優「中村靖日(なかむらやすひ)」さんに似ている。スーパー頼りなさげな外見と声から、正直、ちっとも期待せず、噺を聴いていると…。

「下の下の下の喜太郎と覚えてください」とか、なかなかに面白い事を言う。初見者に覚えてもらう印象的な枕は重要だ。

さらに昔昔亭一門らしく今夜は新作だという。大人の男が、姉の娘(姪っ子)に乞われて「ままごと」をはじめる。次第にリアルおままごとな展開になっていき…。というストーリー。扇子を赤ちゃんに(プリキュアひろみちゃん)見立てての仕草は絶品。これは良いもの見たぞ。おぉ!これは!この人は当りだ!化ける可能性をビンビンに感じる。サゲだけは今ふたつつだったが、前座さんでこれだけの新作を創れるセンスはすごい。すさまじい伸び代を感じました。

夢吉さん。遊雀師匠たちとの学校寄席帰りに立ち寄った食べたランチメニューや、煙草臭いプレハブ鮨屋など珍妙な飲食にまつわる枕から、「ウィキペキディアに殺される!(何が何でも酒が好き!と書かれており、差し入れも酒が多い。うちに一升瓶が18本も並んでいる)」という爆笑枕から「スリル」という桂米丸会長作の新作。

芸協新作派に脈々と受け継がれてきたものだというが…周囲の客との反応とは異なり、俺にはちょっと刺さりにくい噺。俺には恐怖が上手い具合に笑いに転換できなかった。

その点、ド古典「干物箱」は良かった。夢吉さんの描く「善公(善さん)」は超陽気。気分は常にアゲアゲ。独り基地貝の場面が楽しいの楽しくないのって。もう!

最後はネタ下ろしの「茶の湯」。ただし、正確に言えば「茶の湯」は先々月の「雷門小助六・三笑亭夢吉リレー落語会 悶絶篇@日暮里サニーホール」(落語千代田線之会さん主催)に続き二回目。その時に小助六さん→夢吉さんという順番で、リレーで半分演ってくれたのだ。なので今夜は通常の2席ネタ下ろしではなく、1.5席のネタ下ろし。

前後編に切らずに通しで演った「茶の湯」は、夢吉版とも呼べる、これまた夢吉さんに最適の一席。「附子(ぶす)」と同じで、定吉(小僧)がキー人物なのかも。普通の小僧さんも夢吉さんにかかると、大人びた邪悪さを帯びて、途端に生き生きと輝いてくる。で、爆笑を産む。この夢吉さんの技量たるや!

で、最後に夢吉さんからご報告(ご連絡)。来春、真打昇進の件と、それに伴い、「夢丸」の名を継承するとのサプライズ報告。さらにさらに、それに伴い、この「夢吉のバカ」という会も今夜が最終回と言う事。名前が変わるのだから当然と言えば当然。しかも師匠の名である「夢丸のバカ」とは名乗れないので、会のタイトルを変えて継続するとの嬉しい報告も。そうこなくっちゃね。

★マーケティングの視点★
師匠の名を襲名するという気分はどうなんだろう。ブランドの継承、踏襲。いつか夢吉さんに聴いて見たい。あ、その頃は夢丸師匠ってことか。