桂文雀独演会『三席申し上げます』

桂文雀独演会『三席申し上げます』

桂文雀:「そば清」
桂文雀:「応挙の幽霊」
-仲入り-
桂文雀:「御神酒徳利(占い八百屋版)」


噺家さんの仕草に惚れることは多々ある。例えば、小痴楽さんの両手指を挟んで帯にぐいっと押し下げる仕草、扇辰師匠の扇子をクルクルと回す仕草(枕の時に出現)、文菊さんの(はい、どうもっ!)という冒頭のお辞儀、昇也さんの「ひとつ」の指。

そして俺は文雀師匠の「三つ」を作った時の指も好きだ。OKサインにも似た「三つ」を作った時の指。噺家さんはみなするのだろうが、なんとなく文雀師匠の「三つ」が好き。指先まで恰好が、カタが付いている感じがして好き。

それが出たのが最初のネタ「そば清」。「大量の蕎麦をスピーディーに喰う様が巧い。蕎麦が喰いたくなった、無性に蕎麦が喰いたくなった。文雀師匠のせいだ。明日は絶対に蕎麦を喰おう!俺は“蕎麦っ喰い”なのだ。

二席目は「応挙の幽霊」。これは正雀師匠で聴いて以来だな。お酒をちびりちびりと呑(や)る様が巧い。酒が呑みたくなった、無性に酒が呑みたくなった。文雀師匠のせいだ。明日は絶対に御酒をいただこう!俺は“御酒っ呑み”なのだ。

最後は権太楼師匠に教わったという「御神酒徳利」。ただし、ポピュラーな「御神酒徳利」ではない、「占い八百屋」だった。「占い八百屋」は「御神酒徳利」の別バージョンと言う説もあるが、俺は違う噺だと思った。師匠も打ち上げ時に「ちりとてちんと酢豆腐は違う噺です」と言っていた。

今夜は勇気を出して打上げにも参加。

噺家さんの矜恃や落語上の想いを知るのは楽しい。照れ臭そうで申し訳なさげな口調ながらも自分なりの落語美学、哲学、流儀、好き嫌いを語る文雀師匠には、百栄先生、天どん先生とダブるステキな雰囲気を感じました。

高座姿はニコニコ、ふにゃふにゃしていても、自己がしっかりしてるという。芯の強さ。芯があるってかっこいい。芝浜や死神の話とか、とっても共感。すぐに腹落ちできました。師匠の考え。噺家としての了見。落語の方向性。いいわぁ。すてきです。

勇気を出して打ち上げに参加して本当に良かった。約300のネタから蔵出し会、速記本などからの掘り起こしなど、やってもらえると益々うれしいなぁ。

ああっ。やっぱり落語は人間の芸だ。

次回は11月に開催予定だそうです。その前に池袋での独演会だ。


★マーケティング視点★
呑み会の飲み代(のみしろ)、落語会の木戸銭、打ち上げの代金。これらを「費用(コスト)」と見るか「投資」と見るか。投資は株式投資だけではない。LOVE式投資もある。ROI(Return On Investment)を正しく理解して、投資対効果を高めたい。酒代も打ち上げ代も木戸銭も、俺にとってはすべて大切な未来への大切な投資だ。