「デザイン・シンキング」について

最近注目の発想手法に「デザイン・シンキング」というものがあります。「デザイン思考」とも直訳され、言うなればクリエィティブに考えて新しい発想を生み出そうとする手法です。

なぜ今、新し発想法なのでしょうか。それは今までのやり方ではブレイクスルーできない、新しい発想を生み出すことができないと、色々な人が限界を感じているからではないでしょうか。今までというもの、発想の原点は総じて技術やマーケットの動向でした。技術的な優位点などから、新しい商品やサービスを考えるケースが多かったのです。
これに対し、「デザイン・シンキング」は、クリエイティブで柔軟な思考法をベースにしているため、今までとは異なる新しい発想につながる可能性が高くなります。

既存の技術やマーケットをベースに論理的に発想するやり方が「ロジカル・シンキング」ならば、デザイン・シンキングは発想の起点が全く異なります。重視するのは商品でも技術でもない、それらを活用する側・生活者である人間の姿を思い浮かべて考えるものだからです。

生活者がどんな行動を取り、どんな考え方をするか、どんな感情を示すか、などを把握することが、発想の起点になります。生活者自身も、自分のニーズを理解していないかも知れない。必ずしもロジカルには考えず・行わず、無駄な作業も増えるでしょうが、効率最優先ではないところも、発想法としては正しいのです。

機械的に生まれたものなどアイデアと呼べるはずもありません。

「デザイン・シンキング」らしいものと、「デザイン・シンキング」じゃないもの。なにがあるでしょうか。Before(これまで重んじられてきた考え)⇒After(これからの重要点)で、わかりやすく分類してみました。例えば、

■ソリューション(Solution)ではなく、イシュー・セッティング(Issue Setting)。


解決策を考える前に、まず生活者に思いを馳せ、「課題設定」をしっかり行おうというもの。それが「デザイン・シンキング」。

■システム(System)ではなく、コンテンツ(Contents)。


これは仕組みを考えるだけではなく、中身をしっかり考えようというものです。

■グローバル(Global)ではなく、エスノグラフィック(Ethnographic)。


これは、全体主義的、包括的な考え方ではなく、定性的な、小さな単位での捉え方・考え方が大切であることを指します。

■エビデンス(Evidence)ではなく、ナラティブ(Narrative)。


これはEBMではなく、NBMと言い換えられます。ナラティブ・ベイスト・メディシン(NBM)は、 医療・医学における新しい概念であるとともに、新たなパラダイムシフトをもたらす可能性を包含するムーブメントです。『物語』あるいは『語り』という観点から 医療・医学のすべての分野を見直そうというたいへん広範なものであり、生活者や患者さん中心に考えていくことでもあります。ナラティブ・ベイスト・メディシンは、EBM(エビデンス・ベイスト・メディシン)を補完するものとして大いに期待されています。

■プロダクト(Products)ではなく、ビジネスモデル(Business Model)。


これは製品ありきではなく、ビジネスモデルとしての在り方を考えることでロングスパンでのビジネスを考えるというものです。

■コンシューマー(Consumer)ではなく、コミュニティ(Community)。


現代に、もはや消費者はいません。生活者がいるだけです。消費文化という考え方は戦略の失敗を招きます。また、その生活者がいる場所がコミュニティです。コミュニティの考えなくして、ビジネスは語れなくなってきています。

■そして最後が、カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)ではなく、ベンダー・リレーションシップ・マネジメント(VRM)。


CRMとは「Customer Relationship Management」の略語です、顧客との取引や関係を見直すことで、売上や利益率を向上させる仕組みのことです。これは一見、顧客のことを考えているようで、実は考えていません。考えの中心が企業、企業視点だからです。

一方、ベンダー・リレーションシップ・マネジメント。CRMは、あくまでも企業やサービス提供者が主体な考え方であるのに対し、VRMにおいては、生活者が商品やサービスの提供者(Vendor)を選別します。生活者中心の考え方です。企業中心(企業目線)の考え方である「CRM」はもう終わりだと思うのです。

これだけ情報が溢れていると、生活者が自分の努力で最適なVendorを選定するのは容易ではありません。VRMでは、この選択をテクノロジーを使って、生活者のために、より自動的(かつ統計的に精緻)に行おうとしています。

★マーケティングの視点★

この「デザイン・シンキング」が浸透すればするほど、日本はより豊かな国に成長して行くと思うのですが、どうでしょう。ニッポン、どうでしょう。