一個人 X 吉田食堂PRESENTS~扇辰"朝"ひとり

一個人×吉田食堂PRESENTS~扇辰"朝"ひとり

入船亭扇辰:「鮑のし」
入船亭扇辰:「藁人形」
入船亭扇辰:「ねずみ」

俺史上、今までで一番早い落語会。それが今朝の「一個人×吉田食堂PRESENTS~扇辰"朝"ひとり」。開演、朝9:30。15分前に行ったら、長蛇の列。大盛況。

師匠は6時起きでやってきたらしい。「2席の予定でしたが、気分がいいから3席やります」。観客たち、割れんばかりの拍手。そう言って始めたのが「鮑のし」。

吉兵衛のアドバイスの件。言い立て。「『鮑のどこが縁起が悪いってんだ。おめえんとこの祝い物にも、ノシが付いてくるだろう。そのノシを剥がして返すのか。鮑ってのは海女が採るんだ。海女のからだにぴたっとくっついてくるってもんだ。その鮑をのしにするには、仲のいい夫婦が一晩かかって作らなきゃできねえもんなんだ。それを何だって受け取らねえんだ。ちきしょーめ、一円じゃ安い。五円よこせ』って尻をまくって言ってやれ」って部分が、少し口が回らず、「やっぱり朝はダメだね」って師匠。苦笑。

最後は「ちきしょーめ、一円じゃ安い。五円よこせ。そしたら尾頭付きを買って来てやる。だから二円ください」的な、甚兵衛さんがどこまでの優しい気弱な感じのサゲ。「なるほど。じゃあ今度は二円あげるから、もう一つ。一本杖をついたような『乃し』と書かれたのがあるが、あれは一体何だ」「ああ、あの、それは鮑ビのお爺さんでしょう」の部分をミックスさせた感じ?とにかく、扇辰師匠ならではの優しいサゲ、素敵でした。

二席目は初めて聴く「藁人形」。これ、聴きたかったんだよね。「藁人形」といい、「団子坂奇談」といい、怖い話も上手い師匠。「藁人形」はオチがエッヂが効いてて、これまた素敵。ひたすら奇異な「団子坂奇談」とは、ここが違いますね。

と、ここで仲入りのはずが、「10:45には終えてないといけないのでね」と仲入りなしで、ぶっつづけの3席目。師匠の公開生着替え付き。いいぞ、いいぞ。扇辰、いいぞ。(みんなの心の声)

で、トリはもう、これね。「ねずみ」。何度聴いてもいいわ。ふわっとした扇辰ワールドの退場ゲート。最高に贅沢な気分で日本橋を後にしました。

 

次回の「朝落語」は、10月11日(土)古今亭菊之丞師匠だそうです。

 

幸せな一日。〆で呑んだ「ヱビス スタウト クリーミートップ」の美味いこと、美味いこと。扇辰落語と双璧の美味さ。

★マーケティングの視点★
扇辰(師匠の)ブランドは本当に素晴らしく完成されている。優しく、品が良く、情緒的で、人間味があって、面白く、心に沁みる。どんな上手く、面白く、笑いをたくさんとれる他の噺家さんとも違う。扇辰の世界を持ってる。つまり、人間・扇辰ができているということだ。これ以上なく完成しているということではない(だろう)。未完成の完成。隙がある完成。その隙間に客が気持ちよく入り込んで、「扇辰の世界」を享受できる、共有できる。一緒に遊べる。喜多八師匠とは人間味が違うけど、共通点もある。この二人は俺の中の右大臣左大臣。素晴らしい芸人だと思う。